現在、日本を含む世界中でSDGsに基づいた行動が推奨されています。その中でもアパレル業界は、数年前から現在に至るまで多くの問題が取りざたされており、SDGsへの取り組みがますます注目を集めています。
そこで今回の記事では、SDGsの概要からアパレル業界が抱える問題点、そして業界が取り組むべきSDGsに向けた目標について詳しく解説していきます。ぜひ最後までご覧ください。
目次
SDGsとは何か
今や多くの人々に浸透しつつあるSDGsですが、その基本的な概要を紹介します。SDGsは「持続可能な開発目標」を意味し、2001年に制定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2030年までに持続可能でより良い世界を目指すための国際目標として、2015年に国連サミットで採択されました。
SDGsは、17のゴールと169のターゲットから構成され、「地球上の誰一人取り残さない」という誓いのもと、発展途上国だけでなく先進国も含め、全ての国々が取り組むものです。
<SDGsの17の目標>
1.貧困をなくそう
2.飢餓をゼロに
3.全ての人に健康と福祉を
4.質の良い教育をみんなに
5.ジェンダーの平等を実現しよう
6.安全な水とトイレを世界中に
7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに
8.働きがいも経済成長も
9.産業と技術革新の基盤をつくろう
10.人や国の不平等をなくそう
11.住み続けられるまちづくりを
12.つくる責任つかう責任
13.気候変動に具体的な対策を
14.海の豊かさを守ろう
15.陸の豊かさも守ろう
16.平和と公平をすべてのひとに
17.パートナーシップで目標を達成しよう
アパレル業界が抱える問題
アパレル業界、特に「ファストファッション」と呼ばれる業態は、
<ファストファッションブランド一覧>
ユニクロ(日本)
GU(日本)
しまむら(日本)
無印良品(日本)
H&M(スウェーデン)
ZARA(スペイン)
GAP(アメリカ)
SHEIN(中国)
これらのブランドは誰もが知っており、非常に身近で、多くの人が一着は持っているブランドでしょう。特に最近、YouTubeなどのSNSで注目を集めているSHEINは売上が急増し、2022年にはトップクラスのブランドに成長しました。
しかし、ファストファッションには大きく分けて2つの問題、すなわち「環境問題」と「労働問題」が存在します。
環境問題
アパレル業界は繊維産業であり、その多くがポリエステルやレーヨンといった合成繊維、つまりプラスチックを原料としています。私たちが普段着ている衣料品のほとんどは、石油を基にして作られています。ペットボトルのリサイクルや、レジ袋の有料化、プラスチック製ストローの廃止などからもわかるように、プラスチックは海洋汚染や地球温暖化に大きな影響を与えており、さまざまな業界でその削減が進められています。
一見、プラスチック製品には見えない洋服も、製造や染色の過程で有害な化学物質が放出されたり、家庭で洗濯するだけでマイクロファイバーやマイクロプラスチックが海に流出しています。また、合成繊維の製造工程では、大量の化学薬品や農薬、有害物質が使用されており、これが大気汚染の原因にもなっています。アパレル業界から排出される温室効果ガスの量は、年間12億トンのCO2に相当します。
さらに、ファストファッションは安価なため、消費者は簡単に購入し、簡単に手放してしまう傾向があります。断捨離ブームの影響もあり、環境省の調査によれば、日本では一年間に一人当たり約12枚の衣服が捨てられているという結果が出ています。捨てられた衣服のほとんどは焼却されるか埋め立てられ、その量は年間で約48万トンに達します。アメリカでは、年間1150万トンが廃棄されています。
このような環境問題は、合成繊維だけでなく、天然繊維でも発生します。たとえば、綿花(コットン)の生育には大量の水と殺虫剤が必要であり、羊毛を取るための放牧も土壌や水質の汚染につながり、生物の多様性に悪影響を及ぼします。天然繊維だから環境に優しいとは限らないのです。
「簡単に買って、簡単に捨てる」という消費行動が、私たちの地球環境に悪影響を与えていることを理解する必要があります。
労働問題
ファストファッションをお持ちの方は、商品のタグを確認してみてください。ほとんどがアジアで製造されていることに気付くでしょう。特にバングラデシュで製造された商品が多いことがわかると思います。アジアでの製造が多い理由は、低コストで大量生産が可能だからです。
しかし、アパレル製造に従事するアジアの労働者の多くは、低賃金で働いています。中には最低賃金すら支払われず、残業代も支給されないケースも少なくありません。そのうえ、長時間労働を強いられ、児童労働や強制労働といった人権侵害も深刻な問題となっています。さらに、労働者が働く工場の安全性や衛生環境も劣悪なことが多く、事故が発生して労働災害や健康被害を受けることもあります。
発展途上国の労働者を搾取するような労働条件は、早急に改善・対処されるべきです。しかし、このような問題が報じられているにもかかわらず、ファストファッションの売上は年々増加しています。
アパレル業界のSDGsに対する取り組み
アパレル業界は、これまでに挙げた問題に対応するため、SDGs
リデュース:削減
リデュースは、
リユース:再利用
リユースは、
リサイクル:再資源化
リサイクルは、不要となった服を生地として再利用し、
EUで未使用繊維製品の廃棄禁止へ
ファストファッションなどでは、低価格で大量に生産されることから、未使用のまま廃棄される製品が多く存在します。この問題に対応するため、EUでは未使用の繊維製品の廃棄を禁止する措置が導入され、大企業から中規模企業へと順次適用が進められています。
この動きは、遅かれ早かれ日本にも影響を及ぼすことが予想され、繊維製品の生産量が減少する可能性があります。特に東南アジアの縫製工場では、発注が大幅に減少することが懸念されています。企業は、この変化にどのように対応するかを早急に検討する必要があります。
アパレル業界の動きとしては、東南アジアへの発注を抑え、実際の販売状況を見ながら追加の生産を行うという、新たなサプライチェーンの構築が進む可能性があります。国内の縫製工場にリードタイムの短い追加発注を行うことで、柔軟な生産体制を整えることが求められるでしょう。
また、廃棄ロスが減少することで、一定の原価上昇が容認される可能性があり、加工賃の上昇も期待できると考えられます。
アパレル業界が提案する新しい考え方
近年、「サステナブルファッション」という言葉をよく耳にするようになりました。これは、服の生産から販売、消費に至るまでの一連のプロセスにおいて、環境や社会に配慮した取り組みを行うことを指します。例えば、環境負荷を軽減するためにオーガニックコットンを素材として使用したり、長期的な雇用を基盤とした生産体制で作られた衣類を製作することが含まれます。
また、「エシカルファッション」という、フェアトレードな衣類を選び、倫理的な消費を促す考え方や、「スローファッション」と呼ばれる、1着を長く大切に着続けるスタイルも注目を集めています。これらの新しいファッションの提案は、SDGsの目標達成に向けたアパレル業界の取り組みとして、今後さらに広がっていくことでしょう。
まとめ
このように、SDGsを基盤に、世界は地球環境の改善や人々が安全かつ幸福に生きられる社会を目指し、それぞれの課題に取り組んでいます。アパレル業界においては、環境と労働に関する深刻な問題が近年、世界的な注目を集めています。私たち消費者が低価格の商品を大量に消費することも、こうした問題の一因となっていることが指摘されています。
問題を解決するためには、企業だけに責任を押し付けるのではなく、社会全体が一体となって取り組むことが求められています。特に、新たにアパレルブランドを立ち上げようと考えている方にとっては、SDGsに理解があり、持続可能な方法で対応してくれる工場を選ぶことが重要です。
縫製屋ドットネットでは、ものづくりに携わる皆さまの幸せを守るため、信頼できる工場選びをサポートしております。ぜひ、お気軽にご相談・お問い合わせいただければと思います。