縫製工場の廃業は何故止まらない?

仕事がきつい上に給料が安いので人を募集しても集まらない

縫製工場は、勤務時間は常に動きっぱなしで、仕事は決して楽ではありません。ミシンはほとんど自動化されておらず、手を動かし続けなければいけません。機械が自動化されていれば、機械が加工している時間が待ち時間になることもあるかも知れませんが、動き続けなければいけないので、仕事がきついです。

仕事がきつくても、そのきつさに見合う給料が支払われれば良いのですが、ほぼ最低賃金ギリギリの給料なので、社員を募集しても人材の確保はほとんど無理です。特に新卒の採用はほぼ不可能なのが現状です。

さらに、業界自体に将来性があり、今は大変でも明るい未来があれば、縫製工場に就職する人もいるかも知れませんが、将来に全く明るい光が見える訳でもありませんので、人材の採用はとても難しい問題です。

人材

給料が安いのは工賃が安すぎるからです

縫製工場の給料が安いのは、アパレルさんから支払われる工賃が安すぎるからです。1秒0.5円の工賃の仕事を100%の効率で働いたとしても、0.5×22,800秒×22日稼働=316,800円。これが一か月最大の売上げです。この売上げは直接人員が稼ぐ売上げなので、間接人員(事務員や営業、生産管理)の人員が全体の20%だとすると、総人員で割った一人当たりの売上げは253,440円です。ここから製造原価である糸の代金5%を引くと、一人当たりの売上総利益が240,768円。全国の最低賃金902円×8時間×22日=158,752円。会社負担の社会保険料が約20,000円とすると、人件費は178,752円です。これには退職金やその他の福利厚生費は含みません。有給休暇を月に1日使用すると、一人当たりの売上げ総利益は229,814円となり、労働分配率は77.7%となってしまいます。中小企業庁が公開している製造業の労働分配率は72.9%です。

労働分配率が高いのが給料が高いためであれば良いのですが、給料が安く労働分配率が高いのはとても大きな問題で、最低賃金を支払って労働分配率が高いと言うのは、経営を維持して行けないと言うことです。

一人当たりの売上げ総利益222,814円から退職金や福利厚生費を含まない人件費178,752円を差し引くと44,062円です。44,062円で水道光熱費や運賃(これは製造原価に含まれる場合もあります)や車両費、減価償却費、通信費などを支払うと、赤字になるのは確実です。資金繰りが酷く、銀行から運転資金の借り入れをしていれば、金利相当の営業外費用も発生します。

経営状態が極めて悪い縫製工場の後継ぎなどいる訳がありません

従業員に十分な給料の支払いが出来て、会社としても利益を生み、長期的な存続が可能で、将来にも大きな可能性があれば、誰でも後継ぎになりたいと思うでしょう。しかし、これだけ状況が悪い縫製工場の後継ぎをしようと思う人はまずいません。この状況でも後継ぎになろうとする人がいれば、それは相当のお人よしでないと出来ないと思います。

経営者になると、社員から給料が安いことを批判され、銀行からも経営を改善することを強く言われ、株主からも経営責任を問われるような役回りを誰も引き受けようとは思いません。

廃業

経営を改善するには縫製工賃の引き上げが必須です

このような縫製工場の経営を改善するには、縫製工賃の引き上げが必須ですが、縫製工賃は、商品の販売価格から逆算されるもので、簡単に引き上げることは出来ません。

さらに工賃の算出基準は、東南アジアの低賃金の労働者を使って服を作ることを前提にしているので、国内の縫製工場が十分な工賃の支払いを受けることはほとんど望めません。

商品の販売価格を引き上げると商品の売れ行きが悪くなるので、簡単に値上げは出来ません。家電品のようにスペックによって価格が決まるような商品であれば、高品質な商品は高価格になりますが、アパレル商品の品質を明確に定義する基準が無く、ファッションは個人の好みに依存してしまうので、工賃を引き上げる可能性など全くありません。

このような状況に置かれている縫製工場の廃業はこれからもどんどん進むと思います。

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