動作経済の原則(Principle of Motion Economy)

ギルブレスは動作改善の研究を整理して、動作経済の原則を発表した。今日では人間工学(エルゴミックス)として発展してきている。動作経済の原則とは疲労を最も少なくして、有効な仕事量を増すため、人間のエネルギーを効率的に活用するための経験的な法則である。

(1) 身体使用の原則

1. 両手は同時に動作を始め、同時に動作を終える。
2. 両手は休憩時を除いて、同時に遊ばせないようにする。
3. 両腕の動作はお互いに対称かつ反対方向に、そして同時に行うようにする。
4. 手指や身体の動作はできるだけ末梢部位で行えるようにする。末梢部位の順位は指、手指、手指と前腕、上前腕と手指、および胴体と上前腕手指の5種類あり、 それぞれの動作支点は順番にこぶし、手首、肘、肩、胴体が基点となる。指だけの動作が最末梢であり、上半身動作が5種類のうち最中枢となる。
5. 作業者の動作を支援するための物理的慣性(重力)を利用する。ただし、慣性を制御するために筋力を使用する場合は慣性を最小とすべきである。
6. 滑らかな曲線を描く動作は直線ジグザグ軌道を描く動作より良い。
7. 制約のある動作や他の制御をうける動作より、弾道的(自由な曲線的)の動作の方が速いし、容易だし、正確でもある。
8. 反復操作における自発的で滑らかな動作にはリズムが不可欠である。作業は可能な限り容易な自然なリズムがとれるような設計とすべきである。
9. 作業は視線を頻繁に動かす必要のないように、視線を自然な領域に置いておけるように設計されるべきである。
(2) 設備及び配置の原則

1. 治工具や材料は作業習慣が形成されるように特定の固定位置に置く。
2. 治工具や材料は“さがす”ことを省くことができるように前もって決められた姿勢に配置されるようにする。
3. 材料は使用される位置の近くまで供給されるように、フィーダー、部品箱、コンテナなどを利用すべきである。
4. 治工具、材料、操作具は作業者にできるだけ近い位置に、また作業者の最大作業域内に配置すべきである。最大作業域とは胴体を動かさずに肩関節を軸として、左右・上下方向に手が届く距離で構成される作業領域をさす。
5. 治工具や材料は動作順序を最適とするように配置すべきである。
6. 作業終了時に、作業者が完了品の取り出しに手を使用しなくてもよいように移出器、または自然落下方式を利用する。
7. 作業に適正な照明を与える。適正な作業姿勢がとれるための適切なデザインと高さのイスを与える。作業場所の高さとイスの高さは立位と椅子位が交互にとりや すい高さとすべきである。照明は今日では明るさよりも陰影、グレア、色光、視野に配慮すべきことが多い。とくに作業域の配色と作業物との対比は作業性能と 眼精疲労との観点を考慮して選ぶ。
(3) 機械機器、設計の原則

1. 手指で“保持する”、“固定している”という動作をなくす。物の固定には治具、固定器、ペタル式の固定具などを工夫すべきである。人間を保持することに使わない。
2. 複数の工具機能とする。単一機能の工具動作は工具と工具の取り替えなどムダが多い。複数の機能を合わせて1回の扱いで作業がすむようにする。
3. タイプ打ち作業のように指を使用する作業の場合には、各指の特性を考慮した作業とする。親指は人差し指より筋力は弱いが持久力はよい。小指は筋力は弱いが即応性がよいことなどを考慮する。
4. 治工具の柄(グリップ)の設計は手掌面との接触面積が多いものとする。現実の製品には細すぎる柄が多い。細い柄は筋力が伝えられにくく不安定である。
5. レバーやハンドルなどの操作具の配置はあまり作業姿勢を変えることなく操作できる位置と大きさにする。しかし、操作具の大きさは生体的力学的利点を考慮し、小さ過ぎないことが大切である。